相続手続きには「3ヶ月」と「10ヶ月」という、絶対に守るべき2つの重要な期限があります。まず「3ヶ月」は、借金などマイナスの財産が多い場合に、資産も負債も一切の財産を引き継がないようにする法的な手続き「相続放棄」や、プラスの財産の範囲内で借金を弁済する「限定承認」を家庭裁判所に申し立てる期限です。

この期間を過ぎると、借金も含めて全ての財産を相続する「単純承認」をしたとみなされるため注意が必要です。次に「10ヶ月」は、相続税の申告と納付の期限です。期限を過ぎると延滞税などが課されるだけでなく、土地の評価額を大幅に減額できる「小規模宅地等の特例」といった有利な制度が使えなくなり、納税額が大きく増える可能性があります。

遺産分割協議が完了する前に、被相続人の財産を勝手に「使う・処分する」ことは、絶対にしてはいけません。例えば、亡くなった方の預金を引き出して使ったり、不動産を売却したりすると、全ての財産を相続する「単純承認」をしたとみなされます。

これにより後から多額の借金が発覚しても、原則として相続放棄ができなくなるという大きなリスクを負うことになります。また、このような行為は他の相続人からの信頼を著しく損ない「財産を隠しているのではないか」といった疑念を生じさせます。そのため財産には一切手を付けず、必ず相続人全員の合意のもとで手続きを進めることが重要です。

自宅の金庫やタンスから、封筒に入れられ「封印」された遺言書を見つけた場合、その場で開封してはいけません。故人が自筆で作成した「自筆証書遺言」や「秘密証書遺言」は、家庭裁判所で相続人らの立会いのもとで内容を確認する「検認」という手続きを経る必要があることが、法律で定められています。

もし勝手に開封してしまうと、5万円以下の過料に処せられる可能性があるだけでなく、他の相続人から遺言書の改ざんを疑われる原因となります。封印された遺言書を見つけたら、まずは家庭裁判所や専門家に相談しましょう。

相続手続きは、法律や税務の専門知識がなければ対応が難しい場面が非常に多いです。例えば、戸籍謄本の収集漏れで手続きが滞ったり、不動産の評価を誤って不公平な遺産分割になったりする恐れがあります。また、利用できるはずの税金の特例を見逃し、本来払う必要のない多額の税金を納めてしまうといった金銭的な損失にもつながりかねません。

税理士などの専門家は、法務・税務の観点から最適なアドバイスをしてくれるだけでなく、第三者の公平な立場で相続人間の話し合いをサポートする調整役も担います。後悔のない相続のためにも、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

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