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相続事例2「相続税対策でアパート建築 それちょっと待って!」

  • 不動産オーナーの終活,賃貸経営
Writer:大澤 健司

相談内容

ご相談者は、70歳の女性Aさん。相続でもらった空地を所有されていましたが、数年前、大手ハウスメーカーに相続税対策としてアパートを建てないかと営業されました。賃貸事業に関しては素人で不安があったのですが、一括借り上げで家賃を保証します、という言葉を信用し、ローンを組んで1棟6戸のアパートを建てられました。
現在、確かに一括借り上げは継続されていて、家賃は入ってきているものの大きな収入にはなっていない。将来はどうなるのか、そのまま業者は一括借り上げを続けてくれるのか。もし赤字になってしまったら、そんな物件を子供に遺すのは悪いし、そもそも自分の生活にも影響が出るかもしれない。色々な不安があるので、考えられる将来的なリスクを教えてほしい、こういった相談でした。

アパート建築による相続税節税の仕組み

相続税節税の仕組み

まず、何故所有している土地にアパートを建築すると相続税の節税になるのか、その仕組みを簡単に説明させて頂きます。上の画像をご参照下さい。市場相場1億円の土地があったとすると、それが更地であった場合相続税評価は約8,000万円くらいとなります。そのまま相続が発生すると、この土地に対して15%~55%の税率、つまり1,200万円~4,400万円ほどの相続税がかかることになります。
ところが、例えば1億円のローンを組んでこの土地にアパートを建築したとします。すると、この土地は貸家建付地となり、相続税評価額を下げることができます。更地からアパートの敷地となっただけで、約2割ほど相続税評価が下がり、だいたい6,560万円ほどになります。一方、建物については建築費の6割ほどが固定資産税評価となり、さらに貸家評価で3割ほど相続税評価額を下げられます。つまり、1億円の費用をかけて建てたアパートの相続税評価額は4,200万円ほどとなります。土地と建物の評価を合計すると1億760万円。ここから、マイナスの資産である1億円のローンを引くと、760万円。ここに税率をかけると相続税は114万円~418万円。数千万円にも及ぶ節約をできた、ということになります。これがアパート建築を利用した相続税節税の仕組みです。

柏市賃貸人口動態

賃貸需要

これだけ効果があるなら、ということでアパート建築をされる方は多いです。しかし、冷静に考えて頂きたいのは、いくら節税できても、その後のアパート事業でそれ以上の赤字を出してしまえば意味がないということです。節税だけでなく、当然アパート事業の経営がうまくいくのかどうかを検討しなければなりません。
一例として上の画像を挙げています。こちらは弊社がある柏市の20代・30代の人口グラフです。柏市は未だに人口が増え続けている都市ではありますが、実は賃貸入居者のメイン層である20代、30代の人口は減り始めています。つまり、今後賃貸需要は下がり続けるという見通しとなります。需要の低下により起こることは、家賃の低下と空室率の悪化です。アパートを建築する際、建築会社から賃貸事業の収支計画を提示されますが、ほとんどの場合楽観的に作られていて、現実的ではありません。地域の需要、立地などをよく検討し、なるべく現実的な収支計画を立てる必要があります。

日本経済新聞2016年9月30日記事より

一括借り上げの落とし穴

空室が出ても、一括借り上げだから大丈夫――そう考えている方は多いですが、一括借り上げはほとんどの場合、建てた当時の家賃水準を保証してくれるわけではありません。一定の期間ごとに家賃の見直しが行われ、家賃は下がっていきます。また、会社によっては家賃も維持する契約を行うところもありますが、そのためには業者の指定するリフォーム工事を行うことが条件になっていることが多く、ほとんどの場合その工事費用は割高なものになっています。
今回のご相談者のAの場合、やはり家賃は一定期間で見直しという契約になっていました。現在の家賃水準のうちは借入金の返済をしても少し手元に残る計算でしたので、しばらくは維持し、一括借り上げ業者が家賃改定の申し入れをしてきた時には一括借り上げの解除も視野に入れ、今から準備をしておくことになりました。


確かに、アパート建築は相続税の節税に大きな効果があります。しかし節税ができてもアパートの経営がうまくいかず、負の財産になってしまっては意味がありません。節税効果ばかりに目が行きがちですが、アパート建築の際にはその事業収支計画を充分に吟味してください。

大澤 健司 株式会社K-コンサルティング 代表取締役

大澤 健司株式会社K-コンサルティング 代表取締役

不動産業界で、総合不動産コンサルティングをはじめとしたさまざまな行に従事する。

2016年、不動産相続と賃貸経営に特化したコンサルタントとして独立し、株式会社K-コンサルティングを設立。

不動産に関するセミナーや勉強会を精力的に行っている。

  • 公認 不動産コンサルティングマスター
  • 相続対策専門士
  • 不動産有効活用専門士
  • ファイナンシャルプランニング技能士 2級
  • NPO法人 相続アドバイザー協議会 上級アドバイザー
  • 賃貸不動産経営管理士
  • 宅地建物取引士
  • 空き家相談士
  • (借地低地アドバイザー・定借プランナー・ビル経営管理業務主任者・賃金行取扱業務主任者 など)

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